ツムラ ライフサイエンス株式会社(本社:東京都港区 社長:古賀和則)は、株式会社 エス アンド エー アソシエーツ、国立精神・神経センター精神保健研究所と共同で、「就床前の入浴が冷え症を訴える女性の夜間睡眠に及ぼす効果」について客観的に検証し、以下の効果を実証しました。
浴用剤を利用した入浴が冷え症の緩和に有用であるという報告はありますが、入眠促進効果に有用であるという報告はあまり例がありません。その成果を日本睡眠学会第33回定期学術集会(2008年6月25、26日、ビッグパレットふくしま)で発表しました。

背景

近年、人が人らしく社会生活を営み、健康的な暮らしを過ごす為、日々の「生活の質」、いわゆるQOL(Quality of Life)の向上が必要とされている。そして「入浴」と「睡眠」は日常生活にとって欠かせないものであり、QOLの向上と密接な関係を示している。
今回QOLの向上を目指すにあたり、浴用剤使用の有無を問わず1,219名を対象に調査を行ったところ約80%の人がお風呂に入った時の方が「寝付きが良い」、「よく眠れる」という意見であった。また、目覚めについては約60%の人がお風呂に入った時の方が「目覚めが良い」という意見をもっており、更には浴用剤を使用している人の方が、良い「目覚め」を感じている。
一方、日常生活を悩ませている「冷え症」については、若い女性を中心に50%の人が自覚症状があり、その46%の人が「寝つきが悪い」という意見であった。(ツムラ ライフサイエンス調べ)
以上の調査結果より、QOLの向上にとっては「冷え症」の緩和と心地よい「睡眠」が望まれている。
※入浴と疲労・冷え症に関する調査:対象 10歳代~60歳代の男女 有効回答1,219名

目的

手足の冷えの緩和や深部体温降下の観点から、就床直前の高すぎない湯温での入浴が推奨されているが、入浴による入眠促進効果を検討した報告は少ない。
今回、ツムラ ライフサイエンス株式会社は、QOLの向上という視点から、冷え症を自覚している女性を対象に、入浴なし、シャワー浴、浴用剤使用による浴槽浴、という3つの条件下で入眠促進効果の検討を行った。

方法

対象者冷え症の自覚のある25歳から39歳の女性6名
入浴条件1.入浴なし
2.シャワー浴40℃で10分間
3.浴用剤の使用による浴槽浴40℃で10分間
※浴用剤成分:硫酸ナトリウム
(硫酸ナトリウムは多くの粉末タイプの浴用剤に配合されている成分)
実施順序はランダムとし、被験者間で順序効果を相殺
計測指標行動) 連続活動量(アクティグラフ) 生理) 心電図、表面皮膚温 (手、足、肩、胸) 主観) 気分・温冷感評定(VAS)、関西学院眠気尺度
OSA睡眠調査票、入眠感尺度

  

結果

皮膚温

入浴なし(N)は入浴の2条件に比べ就床時の足部皮膚温が約5℃低かった。
足部皮膚温が就床に伴って安定するまでの時間は浴槽浴(B)に比べてシャワー浴(S)で倍以上かかっており、延長する傾向ある。また、入浴なしでは、入浴した2条件に比べて有意に延長していた。
一方、入浴後の冷え感の改善は浴用剤浴槽浴(B)で最も高く、就床直前まで維持された皮膚温からも入浴の効果が、就床前の30分間維持されることが示された。
更に、シャワー浴(S)に比べ浴用剤浴槽浴(B)の方が、温浴効果が高かった。

就床から60分間の自律神経系活動

他の2条件に比べ、浴用剤浴槽浴(B)の場合、交感神経活動が抑制され、副交感神経活動が亢進していた。
○入眠から60分間の睡眠が質的に良好であることを示している。

起床時睡眠感 (OSA 睡眠調査票・KSS・VAS)

主観的な睡眠評価(OSA 睡眠調査)では条件による有意差は認められなかったが、VASによる起床時の「意欲」では浴用剤浴槽浴が、入浴なし、シャワー浴に比べ有意に高かった。

考察

浴用剤浴槽浴、シャワー浴、入浴なしの順で就床時から末梢皮膚温が上昇し安定するまでの時間が短かった。
更に、浴用剤浴槽浴の場合、他の2条件に比べて就床後60分間の交感神経が抑制され、副交感神経が亢進した。また、浴用剤浴槽浴は入浴なしに比べて、起床時の主観的「眠気」が低い傾向にあり、「意欲」は有意に高かった。
これらの結果より、就床約30分前の硫酸ナトリウム使用の浴用剤浴槽浴は、入浴をしない、あるいはシャワー浴に比べて、入眠の阻害要因と考えられる「冷え」を緩和するとともに「睡眠の質」を向上させる可能性を示唆することとなった。
今後は症例数を増やし、更なる検証を行っていく。