「木が成長すると年輪は、内側と外側、どちらから増えていくか知っていますか?」

「バスクリンの森」で切り株を見つけると、木こりの久米 歩さんが話し始めました。

背を伸ばし、幹を太くし、木も日々成長しています。その成長を刻む印が、年輪。しかし実際に年輪がどう増えていくのか、これまで考えた事はなかったかもしれません。

久米さん:「正解は、外側です。木の表面(樹皮)のすぐ内側にある層が成長し、細胞分裂を行うことで、年輪が外へ外へと広がっていきます。成長するスピードは季節や日の当たり方によって異なります。水の多い夏の時期や、太陽の光をたくさん浴びている時は成長も早い。年輪の間隔を見るとわかりますよ」

成長の印を刻みながら大きくなる木の話を聞いて、小さい頃、家の柱に「成長の記録」をつけていたことを思い出しました。

5歳の時、6歳の時、居間にある1本の柱に背を合わせて立ち、頭の上に定規を置き、ボールペンで身長を記録する。毎年線が刻まれていく様子は、なんだか年輪と同じよう。

人間も木も、太陽の下で同じように、成長しているのかもしれません。

根や枝の先端部分からも木は成長します。根を張り、枝を伸ばし、上に下にと伸びていく。しかし人の手によって植えられた木々が一斉に成長すると、生態系のバランスが崩れてしまう危険も生じてしまいます。

周りよりも大きく枝葉を伸ばした木は、太陽の恩恵を何よりも享受します。しかしそれによって、周辺の木には光が届かず、成長が鈍ってしまう。そして徐々に森に光が入らなくなり、今度は地面に多様な草花が育たなくなってしまうのだそう。

そこで必要になる仕事が、間伐です。「バスクリンの森」では、樹皮を剥ぐ「皮むき間伐」を行い、選定した木を伐採し、明るい森を取り戻します。

樹皮を剥ぐと、きれいな肌色の皮が顔を出しました。葉で作られた養分を運ぶ部分です。乾いた樹皮とは逆に水分を含み、表面が湿っています。手にとってなめてみると、ほんのり甘い味。養分を含んでいることがわかります。

ポタリ、ポタリと雫が表面に出てきました。根から葉へと水分を運ぶルートもあり、そこから水が出てきているのだそう。夏の時期は樹皮を剥ぐと、水が勢いよくあふれだすこともあると言います。

樹皮を剥ぎ3~4cmほど切り込みを入れると、養分や水分を運ぶルートが断絶され、木は徐々に枯れていきます。しっかり枯れたら伐採し、森の外へと運び出されます。

豊かな森にするためには、この間伐作業はとても重要。

久米さん:「間伐をしないと木々が密集してしまい、森の中に光が届かなくなります。すると木よりも背の低い植物が育たず、共存できる動植物が限られてしまう。
雨が降っても水が一気に川へ流れ出ないのは、多種多様な虫や動植物が土に住んでいるおかげなんです。何も住んでいない土では、貯水機能が低下し洪水が起こってしまったり、地下のろ過機能が失われ綺麗な水が作り出せなくなったりしてしまいます」

光を差し込ませることで、様々な動植物が暮らす明るい森に、綺麗な水を作る森に変わる。間伐作業によって森全体の調和とバランスが保たれ、健やかな森が維持できるのでしょう。

森のメンテナンスを行う様子は、日常生活にも取り入れられるような気がします。外食が続いたら家でゆっくり食事をとる時間を作ったり、疲れた日はいつもより長めにお風呂に浸かったり。森も人も、全体のバランスを保つことで、豊かになっていくのかもしれません。

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文:もりやみほ、写真:市岡祐次郎