研究領域

　* ミロバランは、インド伝承の東洋医学「ア－ユルヴェーダ」で3大果実とされ、「老化現象防止･無病の薬」 として用いられています。
** 皮膚の水分蒸散量
　健康な皮膚は、乾燥を防ぐために水分が蒸散しないようにバリアによって守られていますが、皮膚のバリア機能が老化などの何らかの原因で崩れると皮膚の水分蒸散量が上がってきます。水分蒸散量は、皮膚の荒れ具合、老化の進行具合を測る重要な指標であると考えられています。

天然保湿因子のフィラグリン前駆体の分化促進作用

　ミロバラン果実エキス（MFE）は、表皮角化細胞の分化を促進し、肌の潤いを保つ天然保湿因子 (NMF) となる総フィラグリンの発現およびフィラグリンへの分化を促進しました

ミロバラン果実エキスのMMP2***活性阻害作用

　濃度依存的にMMP2活性が阻害されることが認められました。しわの成因の1つに、紫外線UVBにより活性化されたMMP2が、表皮と真皮を接着している基底膜成分を分解する機構が知られていることから、ミロバラン果実エキス（TFE）はしわの発生抑制に関与する可能性があると考えられます。
***MMP2：コラーゲン分解に関与するタンパク

ミロバランエキスの皮膚への効果

　ミロバランエキスの配合有無クリームを4週間使用した結果、ミロバラン配合クリームを塗布群で角層水分量（skicon-200）の増加およびくすみ感（メラニンindex）で有意な減少を認めました。また、ミロバラン配合入浴剤を4週間使用した際には、弾力性（キュートメーター）の有意な上昇を認めています。

まとめ

　ミロバラン果実エキスのヒト皮膚に対する弾力性の増加は、表皮由来のGDF5**のⅠ型コラーゲンの産生促進効果が関与していると考えられました。また、ヒト皮膚での水分蒸散量の減少は、表皮の分化およびフィラグリンの分化促進によるものであると考えられます。さらに、ミロバラン果実エキスは、MMP2***の活性化を阻害することにより、基底膜の構造を維持し、しわの発生を抑制する可能性が考えられます。
　ミロバラン果実エキスは、肌の老化現象をコラーゲン産生促進、天然保湿因子の増加、コラーゲン分解の抑制による複数のアプローチにより抑える優れた素材であることがわかりました。