みなさんは、森が「緑のダム」と呼ばれていることをご存じですか? 森林の土壌には、雨水を貯め、時間をかけて川へ流すダムのような機能があるのです。

貯水される場所は、木の根の周りや落ち葉の間、土の中でミミズやモグラが移動した跡など、動植物によって作られる土壌の隙間の部分。そのため、さまざまな種類の生き物が生活する森であるほど、貯水機能は向上します。

森の貯水機能が低いと、大雨のときは土から水があふれ出てしまいます。大量の水が一気に川へ流れたり、土砂崩れを引き起こしたりなど、災害の原因となってしまうことも。

「先日の台風は、土の貯水量を大幅に上回る雨量だったため、森の中でも洪水がおこってしまいました。」と木こりの久米さん。久米さんが森林整備に関わっている森に続く林道が、台風19号の影響で崩れてしまったそうです。

普段は30トン近いトラックが通ってもびくともしなかった林道。水が一気に流れ落ちた勢いで、道路が壊れ、土と一緒に下へ落ちてしまっていました。

水は高い場所から低い場所へ向かって流れます。さらに水の量と流れる速さが掛け合わさり、水の力はどんどん強くなっていくのだそう。

森の中でも、木が不自然に割れていたり、土に埋まっていた水道管がむき出しになっていたり、大雨による地形の変化が起こっていました。中には、土が流れて根っこから倒れている木も。身長の倍近い高さの木が無造作に倒れている様子を見ると、水の威力を思い知らされます。

こういった土砂災害は、防げないのでしょうか。

「今、日本には過去にないほど多くの木が森に植えられており、緑のダムが十分に機能していない場所が多くあります。」流された土や、不自然に割れた木々を見つめながら久米さんは続けます。

久米さん:「昔は生活の燃料のほとんどが木材でした。需要が大幅に上回る状況が続き、山にほとんど木が無かったのです。そこで多くの人が森に木を植え、人工林を増やしました。」

今、日本の面積の約7割を森林が占めています。しかし燃料が木材から石油製品に代わり、袋はビニールが主流になったことで、木材が余ってしまっています。豊富な木材があるにも関わらず、輸入品が多く使われていることも事実です。木材のために作られた森は放置され、木が生えっぱなしの状態になってしまいました。

木が密集した森では、地面に光が十分に届かず、生えてくる植物や生活できる動物が限られてしまいます。また、根を十分に広げることもできません。すると土壌の水を貯めておく空間が少なくなってしまいます。

多様性のある森は、緑のダム機能のためにも必要なこと。そして多様性のある森へ整えるためには、木を適切な量まで間伐し、明るい森を作ることが大事です。

豊富な資源も放置してしまうと、災害を助長してしまう。自分の国の資源を使い、森を適切な状態に整えておくことは、自分の生活を守ることにもつながるのかもしれません。

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文:もりやみほ、写真:市岡祐次郎