株式会社バスクリン(本社:東京都港区 社長:古賀和則)は、9月24日・25日に開催された日本生薬学会第58回年会 (2011年)で、米糠由来成分を高含有するコメヌカ油にフィラグリン産生促進作用があることを確認し報告しました。

背景近年、アトピー性皮膚炎など乾燥状態にある皮膚では、フィラグリンが減少していることが報告されている。フィラグリンは、角質層中の遊離アミノ酸やピロリドンカルボン酸の前駆物質であり、皮膚の保湿と深くかかわっていることから、フィラグリンの合成を促進して乾燥肌の本質的な改善作用を有する素材の開発が望まれている。
目的米糠は古くからスキンケアに有用であることが知られている。しかし、一般的に米糠の油を得るには、米糠原油を精製することから、有用な成分の多くは除かれてしまう。
この度、米糠の持つ有用な成分を可能な限り残存させたコメヌカ油(以下、コメヌカ油「リッチオリザ®」)の開発に成功したので、フィラグリン産生促進作用などについて検討を行った。

1.コメヌカ油「リッチオリザ®」と一般品コメヌカ油の成分分析(試験1)

方法[表]100gあたりの含有量比較
TLC分析では、薄層クロマトグラフ用シリカゲルを用い薄層展開し、HPLC分析では、逆相および順相カラムを用いUV、ELSD検出にて分析を行った。

結果TLC分析からコメヌカ油「リッチオリザ®」には、一般品コメヌカ油と比較して、低Rf値領域に多くの成分が存在することやスポット発色も濃いことが明らかになった。また、HPLC分析から、特に植物ステロール、ビタミン、γ -オリザノールが高含有していることが確認された。


グラフ:コメヌカ油「リッチオリザ(R)」に含まれる脂質類の含有プロファイル


さらに、コメヌカ油「リッチオリザ®」のトリグリセライド領域には、トリオレイン、トリリノレイン、トリパルミチンだけでなく、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸の混合型トリアシルグリセロール類も多く含有していることが推測された。

2.フィラグリン産生促進作用に関する研究(試験2)

実験(1)フィラグリン遺伝子発現 〜香粧品に用いられる油剤との比較

方法ヒト表皮角化細胞を48時間培養し、total RNAを抽出してPrimescript RT Master mixを用いcDNAを合成した。Filaggrin (HA127836, TAKARA Bio)のmRNA発現量は、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDH(HA067812, TAKARA Bio)の発現量に対する相対値として、LightCycler 480 Realtime System(Roche社)を用いてリアルタイムPCR法により求めた。
結果エモリエント基材として用いられる代表的な油性原料には、フィラグリンの遺伝子発現は認められなかったが、コメヌカ油「リッチオリザ®」は有意な発現量の増加が認められた。

グラフ:フィラグイン遺伝子発現量の比較

実験(2)コメヌカ油「リッチオリザ®」のフィラグリンタンパク生産量

方法表皮細胞を72時間培養し、細胞破砕液をニトロセルロース膜に一定量プロッティングした。抗ヒトfilaggrin抗体(Anti-Filaggrin(ARGE NE))を転写膜上に添加しヒストファインシンプルステインMAX-PO(M)(ニチレイ)を反応させ、Lumi-Light Western Blotting Substrate(Roche)を転写膜上に添加し、スポット画像の輝度をCS Analyzer Version2.0(ATTO株式会社)を用いて定量した。
結果フィラグリンタンパクは、濃度依存的に産生され、コメヌカ油「リッチオリザ®」濃度0.003〜0.05%において有意に増加していることが確認された。

グラフ:コメヌカ油「リッチオリザ(R)」のフィラグリンタンパク産生量
まとめコメヌカ油「リッチオリザ®」は、表皮細胞中のフィラグリン産生量を有意に増加させることが、遺伝子レベルだけでなくタンパク質レベルでも確認できました。米糠本来の有用な成分を豊富に含有するコメヌカ油リッチオリザは、表皮細胞中のフィラグリン産生量を有意に増加させるヒューメクタント作用と角層表面を閉塞して水分蒸散を抑制するエモリエント作用の両方を併せ持つ、他には類のない優れた保湿剤であるといえます。今後は、アトピー性皮膚炎などの皮膚の乾燥状態の改善および予防を目指した製品開発に役立てていこうとおもいます。

<関連ページ情報>
ホントにいいの?スキンケア入浴剤って?