株式会社バスクリン(本社:東京都千代田区 社長:古賀和則)は、「生薬育毛剤のマイクロエマルション化による育毛成分の浸透性向上と効果の増強」について平成30年3月に開催された日本薬学会第138年会にて報告しました。

【背景】
弊社はこれまでに、ショウキョウ・センブリ・ニンジン・ホコウエイコン・ボタンピの5つの生薬抽出液を配合した生薬育毛剤が優れた育毛作用を持つことを報告してきました。今回、生薬に含まれる界面活性成分を用いてマイクロエマルション化した製剤を作製し、ショウキョウに含まれる[6]-shogaol の皮膚浸透性を向上させられるかどうかを検討し、さらに、浸透性を向上させた育毛製剤が、実際に育毛作用が高くなっているのかどうかについてもヒトを用いた長期使用試験で確認を行いました。

【方法・結果】
①育毛製剤のマイクロエマルション化
水とエタノールの配分調整や昇温および冷却条件を含めた製法の工夫により、サポニンを代表とする植物エキス由来の界面活性成分のみで、育毛活性成分である[6]-shogaol などの低極性成分を含んだ安定で均一な品質のマイクロエマルション化製剤の調製に成功しました。
②皮膚透過試験
育毛活性成分の一つである[6]-shogaol の皮膚浸透性を、フランツ型拡散セルを用いた皮膚透過試験にて確認しました。

図1に示したように従来の製剤である可溶化製剤に比べて、マイクロエマルション化製剤は、[6]-shogaol の皮膚中へのトータル移動量が大きく増加していることが確認されました。
③ヒト使用試験
薄毛が気になる女性32名について、マイクロエマルション化製剤を頭部に塗布しました。それぞれ製剤使用開始日、使用12週後および使用24週後に測定部位を含む範囲の毛髪を約1cm×1cmの面積で毛刈りし、デジタルマイクロスコープを用いて、毛刈り直後の拡大画像を撮影しました。この画像より抽出した6mm×6mm (0.36cm²)の解析領域内の全毛髪の毛直径を計測し、以下のパラメーターを算出しました。

図2に2012年に報告した従来の製剤(可溶化製剤)と今回開発したマイクロエマルション化製剤の育毛作用を示しました。生薬育毛剤をマイクロエマルション化することにより、総毛髪数の増加、硬毛数の増加、硬毛率の増加および毛直径の増加に対する効果の増強が認められました。マイクロエマルション化製剤の被験者のうち、改善が認められた被験者は80%を越えており、可溶化製剤よりも多くの被験者に効果が現れました。
さらに、全ての被験者が総毛髪数、硬毛数、硬毛率、毛直径のうちいずれか一つは改善していました。
生薬育毛剤をマイクロエマルション化することにより生薬中の有効成分の皮膚への浸透性が向上し、その結果、有効成分が発揮する育毛・養毛作用も増強されることをヒトを用いた長期使用試験で確認することができました。

【まとめ】
以上の結果から、今回開発したマイクロエマルション化生薬育毛剤は従来の製剤よりも優れた育毛剤であることが明らかとなりました。