株式会社バスクリン(本社:東京都千代田区 社長:古賀和則)は、お風呂の場を、家族のふれあい機会、しつけ、教育に有意義に活用してほしいとの思いから、入浴習慣と健康、QOL、生活習慣の関連について調査、研究を行ってきました。
株式会社バスクリンは、株式会社 エス アンド エー アソシエーツ、広島国際大学心理学部田中秀樹教授の研究グループとの共同研究で、浴用剤を使用した習慣的な入浴は、養育者の負担等のストレスを軽減し、親子の睡眠の質を上げ、QOLの向上にも寄与することが示唆されました。
本研究成果は、2019年6月27日、28日に開催された第44回日本睡眠学会定期学術集会報告にて発表しました。

浴用剤を使用した習慣的な入浴は、養育者の負担等のストレスを軽減し、親子の睡眠の質を上げ、QOLの向上にも寄与する 。
【背景と目的】
株式会社バスクリンは、快適生活リズムづくり提案の一環として、就床前に多くの日本人が行う習慣である入浴に注目してきました。冬季には、浴槽浴が末梢の冷えを解消し、体温、覚醒水準、気分のメリハリを高め[1]、夏季には、浴槽浴が体温や交感神経系活動、覚醒感を一過性に高め[2]、良好な睡眠の確保に有効である可能性を報告しました(文献1、2)。また、浴用剤は、入浴によって得られる温熱、静水圧、浮力の作用に加えて、血流増加作用、リラクセーション作用、ストレス軽減などが報告されています。近年、少子化、核家族化、社会構造の変化による子育て環境の変化を背景に、育児不安や育児ストレスなどを持つ親は多いと考えられますが、入浴との関連についての報告は少ないのが現状です。未就学児の睡眠の不規則や、夜中の覚醒が、親の睡眠の質を下げ、ストレスにも関連するものと考えられます。
浴用剤を習慣的に使用し親子で入浴することで、夜間睡眠の質が改善し、幼児や親の気分状態やQOLが良好化すれば、育児ストレスの軽減も期待できる可能性があるものと考え、本研究では、無機塩含有炭酸ガス浴用剤を用いた入浴が、幼稚園児、保育園児とその親の睡眠改善およびQOL向上に及ぼす影響ついて検討することを目的としました。

【方法】
参加者:関東在住の4歳から5歳の幼稚園児、保育園児を持つ養育者(10名)
入浴条件: 1)無機塩含有炭酸ガス浴用剤浴(浴用剤あり) 2)さら湯浴(対照 浴用剤なし)
スケジュール:参加者の自宅で各条件、1週間計測を行いました。(試験期間:2018年11月~12月)
測定指標:養育者、および養育者から見た子供の主観評価
睡眠評価:活動量計(入浴後から起床)
解析は各条件の有効回答を対象に平均値を算出して行い、検定は対応のある t 検定を用いました。
p<0.10で有意傾向あり、p<0.05およびp<0.01で有意差ありとしました。
(グラフ中表記 **:p<0.01 *:p<0.05 +:p<0.10)
すべての試験は、被験者に事前に試験内容を充分説明し、同意を得て行いました。

【結果】
1.養育者の生活および睡眠に及ぼす影響(主観評価)

  • こどもにかかる手間と入浴に関する評価(図1 ふだんより手がかかった:-5~手がかからなかった:+5)
    浴用剤あり条件では、浴用剤なし条件に比べ、入浴についてふだんより有意に手がかかりませんでした(p<0.01)
  • 養育者の睡眠の満足度に関する評価(図2 100点満点)
    浴用剤あり条件では、目覚めの満足度が有意に良好で(p<0.05)、疲労回復感の満足度も高い傾向にありました(p<0.10)。

2.養育者からみたこどもの生活および睡眠に及ぼす影響(主観評価)

  • こどもの日中の様子に関する評価(図3 ふだんより悪かった:-5~ふだんより良かった:+5)
    浴用剤あり条件では、ふだんより楽しそうな様子が有意に観察され(p<0.05)、ふだんより食事に集中する様子もうかがわれる傾向にありました(p<0.10)。
  • こどもの睡眠状態に関する評価(図4 ふだんより悪かった:-5~ふだんより良かった:+5)
    浴用剤あり条件では、ふだんより寝つきが良好な様子が観察される傾向にありました(p<0.10)。

3.睡眠評価
浴用剤あり条件で、養育者の総睡眠時間が有意に長く(p<0.05 333.9±68.1 vs 浴用剤なし 310.5±60.5)、睡眠効率が高い傾向(p<0.10 72.5±12.4 vs 浴用剤なし 70.3±14.0)にありました。
(睡眠効率:就床中、実際に寝ていた時間)

【考察】
① 養育者の睡眠の満足度については、浴用剤を使用すると、目覚めの満足度が有意に良好で、疲労回復感が高い傾向にありました。また、浴用剤を使用すると、ふだんよりこどもをお風呂に入れるのが有意に楽になっていました。
②こどもにおいては、浴用剤を使用した方が、寝つきが良い傾向があったと観察され、ふだんに比べ日中有意に楽しんでおり、食事に集中する様子がみられる傾向にありました。
③浴用剤を使用する事で、寝つきが良く、睡眠の状態を良好化する傾向にありました。

浴用剤の温浴効果、リラックス効果により、ストレス、睡眠にも良い影響をもたらしたのではないかと考えられました。以上の結果から、浴用剤を使用した入浴は、養育者の負担などのストレスを軽減させ、親子の睡眠の状態を良好化するとともに、QOLの向上にも寄与すると考えられました。

株式会社バスクリンは「健康は、進化する。」をスローガンに、お客様の健やかで心地よい生活の提供をめざしてまいります。

参考文献
[1] 松浦・渡邊・石澤 他:浴用剤を用いた入浴が入眠過程に及ぼす影響の予備的検討,ASRS,JSSR,JSC Joint Congress 2009 PROGRAM & ABSTRACTS,196,2009.
[2] 渡邊・石澤・綱川 他:夏季の就床前の浴槽浴が夜間睡眠に及ぼす影響の検討、日本睡眠学会第39回定期学術集会, P-180,2014.