ツムラ ライフサイエンス株式会社(本社:東京都港区 社長:古賀和則)は、株式会社 エス アンド エー アソシエーツ、国立精神・神経センター精神保健研究所と共同で、「浴用剤を用いた入浴が入眠過程に及ぼす影響」について、客観的に検証し、以下の効果を実証しました。 症例数が少なく予備的検討段階ではありますが、香気成分を含む浴用剤を用いた入浴が入眠過程を良好な方向へ導くという報告は少なく、その成果を第6回アジア睡眠学会・日本睡眠学会第34回定期学術集会・第16回日本時間生物学会学術大会 合同大会(2009年10月24~27日、大阪国際会議場)で発表しました。 そして、QOLの向上の為、「ストレスを取り除きたい」、「冷え症を緩和したい」という理由で、入浴に時間を費やしたり、浴用剤を利用している家庭も増加傾向にあります。また、「香りの良さ」を浴用剤選びのポイントとする人も多くいます。(株式会社バスクリン調べ)

背景

近年、日々の「生活の質」いわゆるQOL(Quality of Life)の向上が望まれています。一方「入浴」と「睡眠」は日々の生活にとって欠かせないものであり、QOLの向上と密接な関係を示しています。

目的

良質の睡眠には入浴が有効ですが、浴用剤を利用することで、より良質な睡眠がとれないかという視点から、女性に人気のあるローズの香りの浴用剤を利用した入浴が、入眠過程にどのような影響を及ぼすのかを、生理的指標を用いて比較検討をしました。 尚、今回利用した浴用剤の香りは、使用のタイミングによっては一過性に覚醒状態を改善し、その後リラックス状態を引き起こし、入眠への準備状態を促進する可能性がある興奮性の香気であるローズの香りを利用しました。

方法

対象者心身ともに健常な女性4名(25~39歳)
実施期間2009年2~4月
入浴条件40℃10分間の浴槽浴 1) 浴用剤無し(N) 2) ローズ系の香りの浴用剤使用(R) 3) 香りの揮散性が高いローズ性の香り(RS) ※浴用剤:主成分は乾燥硫酸ナトリウム、Rose absを含む香料等。溶解色は白濁色
計測指標生理)睡眠ポリグラフ、心電図、表面皮膚温(手、足、肩、胸) ※睡眠中の解析は就眠許可から120分間を対象としました。 主観)気分・温冷感評定(VAS)、関西学院眠気尺度(KSS)、OSA睡眠調査評、入眠感尺度

結果

◆入浴後の評価 入浴後の状態に対する主観評価はRSで最もよく、全員が入浴後に「気分が落ち着く」、「すっきりする」と良好な覚醒状態でした。 入浴後の脳波測定では入浴前に比べRSで副交感神経活動が低下しており、また、心拍数も上昇していることから覚醒状態であることが明らかになりました。 ◆就眠許可(消灯)から60分までの入眠過程と睡眠前期の評価では、Nに比べてR、RSでは入眠潜時が短縮しており、入眠から睡眠段階3、4の出現が増加していることが明らかとなりました。また交感神経を示す指標はNに比べR・RSの方が低下しており交感神経活動バランスは休息方向へ移行している可能性が示されました。

N R RS
入眠潜時(分) 5.3 3.0▼ 1.3▼
徐波睡眠潜時(分) 6.3 6.7△ 5.7▽
徐波睡眠割合(%) 32.9 64.9▲ 88.1▲

まとめ

上記の結果からローズ系の香りでの入浴は入眠過程を良好に導く可能性を示し、その要因は就眠1時間前の浴用剤を利用した入浴が一時的に覚醒状態を高めたものと推測されます。また、特に揮発性の高い浴用剤を利用した入浴は、より心理的に良好な覚醒へと導き、入浴と香りによりメリハリのある生活と快適な睡眠を導く可能性を見いだされました。しかし、まだまだ症例が少ないため、今後更なる研究を続けてまいります。 使用した浴用剤につきましては広報へお問い合わせください。