株式会社バスクリン(本社:東京都千代田区 社長:古賀和則)は、熊本保健科学大学との共同研究である「入浴剤の色と香りがデイサービス利用者の気分・感情に及ぼす影響」について平成30年5月に開催された第83回日本温泉気候物理医学会総会・学術集会にて報告しました。

【背景】
香りや色が人の感情そして行動に対して様々な影響を与えることから、色彩や香りを用いたツールなどの開発により、認知症の予防等への取り組みが行われている。
本研究では、入浴剤の色と香りが高齢者の気分や感情、そして行動に及ぼす影響について検討した。

【方法・結果】
対象:某デイサービス利用者 12名(男性3名、女性9名 年齢83.8±7.6歳)
入浴:湯温41℃~42℃によるデイサービスセンターにおける入浴とした。
入浴条件:
①無機塩含有炭酸ガス系入浴剤(以下「入浴剤」)、②入浴剤の色・香りを除いた成分のみ、③入浴剤の色・香りのみ(以下「色・香りあり」)、④さら湯とした。
測定項目:
認知症ケアマッピング*1を用いた入浴後2時間の行動観察を行った。
入浴直前後にPOMS(気分や感情の状態)、血圧、脈拍、鼓膜温、顔面皮膚温、表情変化*2を測定した。
*1:認知症をもつ人々が過ごす施設内で、状態の良し悪し、また、どのような行動をしているのかなどを観察評価する方法。よい状況(Well-being)とよくない状況(Ill-being)を6段階のWIB値で数値化する。
*2:20段階のface scale(表情の変化)

結果:
2時間の行動観察において入浴条件間での差は見られなかったが、入浴剤、色・香りありでWIB値*1の変化で数値が増す変化が観察できた。
POMSにおいては、入浴前後の平均値では、色・香りありで、TA(怒り-敵意)及びTMD(総合的気分状態)が低下傾向、表情変化は増加傾向をみとめた。また、色・香りの有無の比較では、色・香りありと入浴剤での方が、CB(混乱-当惑)は低下した。
血圧、脈拍、鼓膜温、顔面皮膚温の有意な変動は認められなかった。

まとめ:
入浴時の湯色と香りが認知症の行動改善に有用である可能性、および高齢者の気分・感情を調整する可能性が示唆された。今後、さらなる検証を進めていく予定です。