株式会社バスクリン(本社:東京都千代田区 社長:古賀和則)は、独自の研究で、日常レベルのUVBにより誘導される主要な皮膚老化機構に対する、低濃度溶存水素の作用について解析し、その成果を平成30年5月25日~27日に開催された第18回日本抗加齢医学会総会にて報告しました。

【背景】
2007年に水素が活性酸素種(ROS)を消去し、酸化ストレスに対して細胞を保護する機能を持つことが示されて以来、水素の疾病予防・治療効果に関する多くの研究が行われています。
当社においても水素の抗酸化作用に注目し、精力的に研究を行ってきました。平成29年6月の第82回温泉気候物理医学会総会・学術集会では、入浴剤で実現可能な低濃度溶存水素が、紫外線によって皮膚の細胞内に過剰に発生するROSを消去し、光老化に対して有用であることを報告しました。さらに、同年11月の日本生理人類学会第76 回大会においては、水素入浴剤の連続使用が、角層水分量、皮膚明度、重層剥離率を有意に改善させ、スキンケアに有用であることを示してきました。
紫外線によって誘導される主要な皮膚老化機構の1つに炎症があります。皮膚の内側で発生する微弱な炎症症状は、肌トラブルの原因となるだけでなく、この炎症が慢性化すると、シミやシワなどの皮膚の老化症状を促進することが分かっています。

【目的】
本研究では、日常レベルのUVBによって誘発される皮膚の炎症に対する、入浴剤で実現可能な低濃度溶存水素の作用について検証を行いました。

【方法】
表皮細胞に、日常レベルのUVB(7mJ/㎠)を照射し、24時間、25ppbおよび50ppbの水素を含む培地で24時間培養後、細胞内の炎症性サイトカインの遺伝子発現量をリアルタイムPCRで、細胞外へのタンパク質分泌量をELISAで解析しました。

【結果】
1)遺伝子発現量について
グラフ1に示すとおり、日常レベルのUVB照射により、炎症性サイトカイン(TNF,IL1B,IL6)の遺伝子発現量が増加しました。それらの過剰な発現は、25ppb、50ppbの水素添加により濃度依存的に抑えられました。

2)タンパク質分泌量について
グラフ2に示すとおり、日常レベルのUVB照射により、炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-1β,IL-6)の細胞外分泌量が増加しました。それらの過剰な細胞外分泌は、上記遺伝子発現の結果と同様に水素濃度依存的に抑えられることがわかりました。

【まとめ】
入浴剤で実現可能な低濃度溶存水素が、UVBによって誘発される皮膚炎症に対して有用であるかの検証を行いました。25ppbおよび50ppbの水素が、UVB照射による表皮細胞での過剰な炎症性サイトカインの遺伝子発現および細胞外へのタンパク質分泌を抑制することを見出しました。
皮膚老化は、微弱な炎症の蓄積によって、時間をかけて進行していきます。皮膚の炎症症状は、今回用いたUVBに限らず、PM2.5、花粉などによっても引き起こされます。
日常的に低濃度溶存水素を皮膚に作用させることは、様々な要因によって発生する微弱な炎症症状を緩和し、皮膚老化を遅らせる手段として有用であると考えられました。