株式会社バスクリン(本社:東京都千代田区 社長:三枚堂正悟)は、子育て世代に向けて、充実したバスライフの提案、ひいては次世代への入浴文化の継承を目的に、2015年より東京都市大学人間科学部 学部長 早坂信哉教授の研究グループと共同で、未就学児を対象に入浴習慣と子どもの成長・発達に関する「浴育」の研究を行っています。
本研究では、未就学児(0~5歳)における浴槽入浴がもたらす心身の変化に着目し、調査を行いました。その結果、未就学児における浴槽入浴習慣は、子どもの寝つきを良くし、健康感を高め、親子の会話が増えることが明らかになりました。特に、寝つきの良い子どもにおいては、週6回以上の浴槽入浴実施者が多く、入浴時のお湯の温度が熱めで、浴槽につかる時間が短い(41-42℃,10分以内)入浴法の実施者が少ないことが示されました。
本研究の成果は、2022年10月に開催された第81回日本公衆衛生学会(山梨県甲府市)及び2023年6月発刊の健康開発雑誌44(一般財団法人日本健康開発財団)にて報告しました。

【結果サマリ】

  1. 浴槽入浴は、子どもの寝つきを良くし、健康感を高める
  2. 寝つきの良い子どもは、保護者の入浴法(お湯の温度、湯船につかる時間、入浴剤の使用)の意識が高い
  3. 寝つきの良い子どもは、浴槽入浴頻度が高い

【まとめ】
子どもの寝つきを良くするには、週6回以上の浴槽入浴を。
お湯の温度は39℃など、ぬるめで、湯船にゆっくりつかる入浴がおすすめです。
※気温やお子様の年齢、体調に合わせてご調整ください。また入浴前後には、水分補給をしっかりと行ってください。

【共同研究者コメント】

睡眠は子どもの発育に大切ですが、子どもがなかなか寝ないのは子育て世帯の悩みの1つです。今回の調査では、39℃のぬるめのお湯で20分ほど、ゆっくりと毎日浴槽入浴することで寝つきが良くなる可能性が示されました。保護者にとっては研究に基づいた具体的で有益な育児情報です。お子さんのためにも毎日の入浴をお勧めします。東京都市大学 人間科学部 教授 早坂信哉

【背景】

子どもの成長過程において乳幼児期は、家庭内での基本的な生活習慣の基礎を身につける大切な時期です。
近年は、生活スタイルの変化に伴い、子どもの夕食時間や就寝時間の遅延化が指摘されていますが、このような時代背景においても、保育所に通う幼児の浴槽入浴を行う割合は9割を超え、子育て家庭に浴槽入浴習慣が根付いていることが推察されます。浴槽入浴は、温熱作用、血行促進作用、リラックス作用などがありますが、浴槽入浴習慣がもたらす子どもの心身の変化に関する実態は十分に明らかにされていません。そこで、本研究は未就学児(0~5歳)における浴槽入浴がもたらす変化と、その変化に関連する要因の解明に取り組みました。

①浴槽入浴は、子どもの寝つきを良くし、健康感を高める
浴槽入浴実施者のうち、70%の人が浴槽入浴をすることで子どもの心身の変化を感じたと回答しました(図1)。
そのうち、寝つきが良くなった(22.7%)、健康になった(17.1%)、機嫌が良くなった(17.1%)、会話が増えた(12.8%)と回答し、浴槽入浴をすることで、子どもの寝つきの良さを実感する人の割合が多いことが示されました(図2)。

図1.浴槽入浴で子どもの心身の変化を感じた割合

図2.浴槽入浴で得られた子どもの変化の分布(%)

②寝つきの良い子どもは、保護者の入浴法の意識が高い
子どもの入浴法(入浴温度、浸水時間、入浴剤使用頻度)の意識調査では、子どもの寝つきの良さを実感する保護者は、非実感者と比較して、入浴法の意識得点(10点満点)が有意に高いことが示されました(子どもの寝つきの良さ実感者:8.4±2.33点、非実感者:6.4±2.81点)。
また、子どもの寝つきの良さを実感する保護者が入浴法を意識する理由は、入浴剤などの使用による塩素除去(OR*1:9.38,95%CI*2:2.48-8.40)、香りを楽しむ(OR*1:4.54,95%CI*2:1.94-10.6)、乾燥防止(OR*1:3.02,95%CI*2:1.65-5.51)との関連があることが分かりました。 *1:OR(オッズ比) *2:95%CI(95%信頼区間)

③寝つきの良い子どもは、浴槽入浴頻度が高い
0~5歳児における寝つきの実態は、入眠良好児(就床後寝つくまでの時間が20分以内)が55%、入眠不良児(就床後寝つくまでの時間が20分より長い)が45%でした(図3)。0~1歳児までは、睡眠習慣が確立されていないため、年齢による要因が考えられますが、本調査においても、入眠不良児が4歳児で有意に少なく、5歳児においても少ない傾向が得られており、成長とともに良い入眠リズムが確立していることが考えられます。
また、週6回以上の浴槽入浴実施者の割合は、入眠不良児と比較して入眠良好児で有意に多いことが示されました(図4)。

図3.子ども が就床して寝つく時間の分布(%)

図4.寝つきの時間別の浴槽入浴頻度の分布(%)

【まとめ】子どもの寝つきを良くするには週6回以上の浴槽入浴を。ぬるめでゆっくりつかる入浴がおすすめ!

寝つきの良い子どもの入浴習慣と睡眠習慣のうち、影響している因子を解析しました。その結果、入眠良好児の特徴は、0歳児と比較して4歳児が多く、週6回以上の浴槽入浴実施者であり、入浴の湯温・浸水時間は、ぬるめで長い入浴法(39℃20分より長い)が多い傾向にあり、熱めで短い入浴法(41-42℃10分以内)が少ないことが示されました。また、就床時間帯では、21時の就床者が平均で、22時以降の就床者が少ないことも示されています。
このことから、子どもの寝つきには年齢が関与しているものの、入浴を起点として睡眠環境を整えることで、子どもの寝つきを良くする可能性があることが示されました。

【方法】

調査期間:2021年1月
調査対象:0~5歳児の子どもを持つ保護者429名
調査方法:webによる自記式横断研究
調査項目:子どもと保護者の性・年齢、入浴習慣に関する項目(浴槽入浴頻度、入浴剤使用頻度、入浴の湯温・浸水時間)、浴槽入浴をすることで得られる子どもの心身の変化、睡眠に関する項目など
解析方法:下記の通り実施した。
・単純集計を実施した。
・点数集計後、マンホイットニーのU検定にて解析した。入浴法の意識の理由は、選択式で回答を得た後、その該当有無からカイ二乗検定にてオッズ比、95%信頼区間を算出した。
・子どもが寝付くまでに要する時間の単純集計後、浴槽入浴頻度とのクロス集計からカイ二乗検定にて解析した。
・子どもの寝つきに要する時間(入眠良好者=1、入眠不良者=0)を目的変数とし、入浴習慣、睡眠習慣を説明変数とした多変量ロジスティック回帰分析を行い、オッズ比、95%信頼区間を算出した。子どもの年齢、性別は調整因子とした。

【今後の展望】

本研究では、未就学児(0~5歳)における浴槽入浴がもたらす子どもの変化に着目し、調査を行いました。その結果、浴槽入浴は子どもの寝つきを良くすることに加え、寝つきの良い子どもを持つ保護者は入浴法の意識が高いこと、さらに寝つきの良い子どもは、浴槽入浴の頻度が高く、湯温が熱めで短くつかる入浴法が少ないことが明らかになりました。入浴は体をきれいにするだけでなく、子どもの寝つきを良くし、健康感を高め、親子の会話を通じて絆を深めることができます。入浴時の湯温や浸水時間、入浴剤の使用などの入浴法を意識することで、さらに入浴による寝つきの効果を高めることが可能です。
本知見が、子育て家庭における保護者の入浴意識の向上、子どもの健やかな成長・発達の為の基礎資料の一つになることを期待します。当社では、今後もお客様に充実したバスライフをご提案できるよう、「浴育」の研究活動を続けてまいります。

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