“雨がふれば海くらいできるよ”

これは、スタジオジブリ制作の映画『千と千尋の神隠し』で、ずっと降り続いた雨がやんだ後、辺りが一面海になってしまったことに驚いた、主人公の千(せん)が先輩のリンに言われた言葉です。

当時は映画の世界だけの、現実とかけ離れた表現のように聞こえていましたが、実は似たようなことは、現実世界にも起こっていました。

「ここ、小川が出来てますよ」と木こりの久米さんが地面を指さしました。梅雨の長雨が終わりを迎え始めた7月に、再び「バスクリンの森」を訪れた時です。

近寄ってみると、幅30センチほどの小川ができています。確か前回「バスクリンの森」に来た時には、ここに小川らしきものはありませんでした。

久米さん:「ここ数日雨が続いていたので、土が水を吸収しきれず水が染み出しています。水の量が多くなるとこの小川は支流になって本流へ流れていくのです。」

小川が始まっている部分までたどってみると、蛇口を上に向けてひねった時のように、水が小さく吹き出していました。小川は10メートルほど続き、また地面へと吸収されています。おそらくこの一帯だけ、土壌の貯水量を超えてしまったのでしょう。

森の中には、雨が降った時にだけ川が出来る場所がたくさんあると久米さんは言います。さらに川の水を生活水として使っている地域の人は、常に水を利用できるよう、臨時で流れる川と常時流れる川を経験値として知っているのだそう。

さらに水は、地形を作る大きな要因でもあると久米さんは話を続けました。

久米さん:「日本の地形は川によって作られている部分が多くあります。浸食され渓谷ができたり、川の水と一緒に流れた土砂で平野ができたり。もちろん長い年月をかけてですが、雨が降り、川ができると、それによって私たちの生活する場所や自然美が作られていくのです。」

“雨が降ると海ができる”……とまではいきませんが、雨は自然や暮らしを作りあげる重要な存在でもあります。

雨や風など気候の影響を受け、自然は変わっていきます。何百年、何千年もかけて少しずつ変わることもあれば、大災害などで一気に変化することも。

そんな自然とともに私たちは日々生活をしています。

森が地中に水を貯め、川ができてその水が流れる。周辺に人が住み、生活が作られ、文化が発達していく。私たちが当たり前のようにひねる蛇口の向こうには川があり、森があり、そして森を保つために働く人々がいます。

森と人は水を介して繋がっていることに、あらためて気づくことができました。

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文:もりやみほ、写真:市岡祐次郎