「木を切る」と聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか。

適切な伐採は、多種多様な生物が住む明るい森を作るために必要なことです。「バスクリンの森」ではこれまで、樹皮を剥いで木を枯らす「皮むき間伐」を行ってきました。今回は、皮むき作業を終えた木を伐採する様子をお届けします。

木を切るためにはまず、木を倒す場所の選定が必要です。倒れた時にほかの木にぶつかってしまったり、周りにいる人に当たってしまったりなど大きな事故を防ぐため、倒れる場所を決め、倒す時に使用するロープを張りました。

準備が終わると、「切る前に、木に一礼しましょう」と木こりの久米さん。「バスクリンの森」の木は、多くが樹齢50年ほど。自分より長く生きてきた木に対し、これまで森を支えてくれた感謝を込めて挨拶しました。

さあ、いよいよ伐採!……と言いたいところですが、もうひとつ大事な作業があります。狙った方向へ確実に木が倒れるよう、根元近くに「受け口」を作ることです。

横は平行に、斜めの線は45度に切り込みを入れて受け口を作ります。これは伐採時に必須の基本作業であり、とても重要なのだとか。

のこぎりの刃を樹皮につけ、力いっぱい動かしてみました。しかし、思うように切れません。

「力はあまり使わなくて大丈夫。切り方に適した身体の使い方があるんです」と久米さん。姿勢を直してもらい、のこぎりを幅いっぱいに動かすと、シャカシャカと音をたてながら幹の中心へ入っていきました。

落ちた木くずからは、ほのかに木のよい香り。

受け口が出来たら、いよいよ木を切り倒します。受け口の横の線と平行になるよう、反対側からまっすぐに切り込んでいくのがポイント。そして、残り数センチのところで一度止めます。ここからは最初に用意したロープを引っ張って倒すのだそう。

「よいしょ。よいしょ」

久米さんの掛け声とともに、ロープを引っ張ると……。

力強く立っていた木が、メリメリと音を立て、ゆっくり傾きました。様子を見ながら引き続きロープを引っ張ります。

──ドスン。

大地へ、静かに倒れる木。枝葉についていた雨粒が日の光に照らされ、倒れた木を追ってキラキラと落ちていきました。まるで、木が役目を終えた瞬間を、綺麗に彩っているかのよう。

倒れた木を眺めていると、「空を見てみてください」と、久米さんの声が聞こえました。

見上げると、枝葉で覆われた空の一部分がぽっかり空き、やわらかい陽が差し込んでいます。先ほどの木があった場所です。

久米さん:「針葉樹の栄養源は太陽の光。伐採で出来た空間から陽が届くと、周囲の木は成長してさらに枝葉を伸ばしていきます。空間を作ることで、周りの木は太く大きく育つのです」

1本の木が森での役目を終えると、太陽の光が地面を照らし、木や植物が育ちます。虫や動物も集まり、明るく賑やかな森へと変わるでしょう。間伐作業は、そんな森の変化をサポートする、大切な役割を担っているのです。

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文:もりやみほ、写真:市岡祐次郎