温泉によってお湯の感触に違いを感じたことはありませんか?「ヌルヌル」「ツルツル」などの表現や、「お湯がやわらかい」「やさしい感触のお湯」などと表現されることもあります。このような温泉のお湯がもつ独特の感触は、温泉に含まれる成分や濃度と大きく関係しています。温泉の成分とお湯の感触=湯ざわりの関係を知り、より温泉の魅力を満喫しましょう。

温泉の湯質と湯ざわりの違い

酸性の温泉―ピリピリ感
酸性の温泉は殺菌力が高く、ピリピリと刺激のある湯ざわりを感じます。
魅力的なお湯ですが、肌が弱い方には刺激が強いため、入浴後はシャワーなどで上がり湯をするのがおすすめです。

アルカリ性の温泉―ヌルヌル感・ツルツル感
アルカリ性の温泉は、皮膚の角質や皮脂を緩やかに溶かすため、お湯の中で肌を触るとヌルヌルとした湯ざわりを感じます。皮膚の清浄効果が高いため、入浴後はさっぱりとした爽快感と肌のツルツル感を感じることができます。こうした温泉は「美人の湯」と呼ばれることが多いです。

塩化物を含む温泉―ペタペタ感
塩化物を含む温泉では、入浴後はペタペタとした感触が特長で、保温効果が長続きします。これはお湯に含まれる塩分が、体を保温ベールで覆い、体温の放散を防ぐ効果があるためです。入浴後の感触と体のぽかぽか感を楽しめる魅力的な温泉です。

二酸化炭素を含む温泉―シュワシュワ感
二酸化炭素を含む温泉では、入浴すると身体に気泡が付着し、その際にシュワシュワとした感触を得られます。二酸化炭素は皮膚から吸収されて、血管を拡げ、血流を促進し、身体がよく温まります。そのため、ぬるめのお湯でもしっかりと身体が温まります。

有機物を含むモール泉―ツルツル感・しっとり感
「モール」とはドイツ語で「湿原」や「沼」のことを意味し、太古に植物が堆積し、石炭になる一歩手前の成分を含む黒味がかった湯をモール泉と呼びます(正式な泉質名ではないため、温泉分析書に記載はされません)。有機物を含むモール泉は、ツルツルとした湯ざわりがあり、入浴後は肌にしっとり感が残ります。琥珀色のお湯が特長的な温泉です。

硫黄を含む温泉―スベスベ感
硫黄を含む温泉では、皮膚の角質を柔らかくする作用があり、入浴中や入浴後にスベスベとした湯ざわりを感じることがあります。硫黄の成分により、殺菌力が高い温泉です。

ここまで特長のある温泉の湯ざわりを6つほど挙げましたが、日本は「単純泉」が多いため、湯ざわりに大きな差を感じないこともあります。しかし、湯ざわりを感じにくいから「温泉成分が少ない」ということではなく、刺激が少ない「単純泉」では、小さなお子様から高齢者まで安心して幅広く楽しめるという特長もあります。
温泉のお湯の湯ざわりや、入浴後の肌の感触の違いも温泉の魅力のひとつです。温泉に訪れた際は、ぜひ確かめてみてくださいね。

参考文献 阿岸祐幸:温泉の百科事典、丸善出版、2012