今回取り上げる「にんじん」とは、生薬の「オタネニンジン」のこと。にんじんという名前が付いてはいるものの、私たちが普段食している「にんじん」とは、種類がまったく異なる、ウコギ科の薬用植物です。

オタネニンジンの効果とは

「オタネニンジンなんて名前、初めて聞いた」、という方も多いでしょう。でも、高麗人参といえば、何となくイメージできませんか? そう、オタネニンジンとは、高麗人参のこと。滋養強壮に富む生薬として有名で、栄養ドリンク、お酒、薬膳料理にもよく使用されます。韓国の高級土産といえば、高麗人参を思い浮かべる方も多いでしょう。野菜のニンジンとはまったく別物です。
価格に関しては、モノによってかなり開きはあるものの、薬効が強いとされる天然ものなどは、1千万円以上の値がつくとか。高麗人参が生薬として有名なのは、滋養強壮という効能だけでなく、希少価値の高い「高級品」であることも、理由のひとつなのかもしれませんね。

日本にも古くから存在

韓国からの輸入品、というイメージの強いオタネニンジンですが、実は日本でも「不老長寿に効果あり」とされ、江戸時代から栽培されていたそうです。オタネの漢字は「御種」。この字からも、希少価値の高さがうかがえます。
現在も、長野県や福島県の一部で栽培されていますが、栽培はなかなか難しく、少量しか採れないようです。一番のネックは、栽培期間が長いこと。収穫に至るまでには5年ほどかかり、なおかつ、オタネニンジンを育てた土壌は土がやせてしまうため、多くの場合同じ土地では連続して栽培することができません。
株式会社バスクリンでは、オタネニンジンを育毛剤や入浴剤などの生薬成分の一部として使用しています。しかし、このように日本での栽培がなかなか難しいため、中国から独自のルートを用いて、安全かつ生薬として効能の高いものを仕入れています。

身近とはいえないけれど……

オタネニンジンは希少価値が高いため、前回の「しょうが」のように、毎日の食生活に取り入れることは難しいでしょう。それに、味はかなり苦味が強く、万が一手に入ったとしても、生ではとても食べられたものではないようです。

けれども、だからこそ、お土産などで高麗人参入りのものをもらったときなどは、そのありがたさが増すものです。有名な韓国料理、サムゲタンなどにもよく使われていますので、食するチャンスもありそう。「あんなに価値の高い、オタネニンジン(高麗人参)が入っているなんて」というワクワク感。こうした気分的な高揚感も、生薬の効能をアップさせてくれるかもしれませんよ。