甘草(カンゾウ)といえば、漢方薬を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。確かに甘草は、たくさんの漢方薬に配合されている生薬ですが、実は、薬よりも私たちのくらしそのものに、深く根付いている生薬なのです。
〈基原〉マメ科カンゾウ属の植物で根や根茎を乾燥させたもの

生薬としての甘草

甘草は、数ある生薬のなかでも、漢方薬に処方される頻度がとても高い生薬のひとつ。効能は、消炎作用がよく知られていますが、甘草の場合、こうした効能だけではなく、他の薬とよく調和することも、使用頻度の高さにつながっているようです。
日本でも古くから栽培され、江戸時代には、薬用植物として幕府に納められていたとか。山梨県にある「高野家」は、八代将軍徳川吉宗に甘草を納めていた家として知られ、今なおその屋敷は、重要文化財旧高野家住宅(別名:甘草屋敷)として、山梨県の塩山駅近くに保存されています。

実はこんな身近な食品にも!

このように、生薬としてのイメージが強い甘草ですが、実際は、生薬として使用されるよりも、甘味料として使用されることのほうが多いのです。甘草の主成分であるグリチルリチンの特長は、強い甘味。そのため日本では、醤油、味噌、漬物の甘味料の一部としてよく使用されていますし、海外でも飲料やリキュールの添加物として使われています。
また、甘草の用途は食品だけにとどまらず、化粧品、入浴剤、シャンプーなどにも配合されています。特に、甘草エキスに含まれるグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)は、炎症を抑制する作用が期待され、多くの外用製品に使用されています。ところが株式会社バスクリンの研究では、甘草エキスには、GK2に由来する炎症緩和作用だけでなく、シワ形成や肌のハリ・弾力性の低下を抑制する作用など、GK2にはない有用な効果も確認されています。このような背景から、株式会社バスクリンでは、GK2ではなく、甘草エキスを活用した製品開発を目指しています。

「芽甘草」って甘草のこと?

ところで、春先になるとたまに見かける高級野菜のひとつに「芽甘草」というものがあります。一瞬、甘草の芽?と思ってしまいますが、「芽甘草(芽萱草)」はユリ科のノカンゾウの芽。生薬の甘草はマメ科で、まったくの別物なのです。でも似た名前となると、ちょっと食べてみたくなっちゃいますよね。

実はこんな身近なところに…甘草(カンゾウ)_1

現在はどこで栽培されているの?

これだけ身近なものに多く使用されているとなると、日本国内だけでも、甘草の消費量はかなりの量になるはず。しかし、現在日本で使用されている甘草は、ほぼ輸入品。安価な原料が中国から輸入されるようになってからは、日本では生産が限られています。近年では、資源の枯渇が懸念されるようになってきたため、国内外での栽培研究も行われているとの話はあるものの、なかなか簡単にはいかないようです。