株式会社バスクリン(本社:東京都千代田区 社長:古賀和則)は、修文大学健康栄養学部との共同研究で「年代別に入浴時の体温変化が身体に及ぼす影響」について検討を行いました。その結果、加齢に伴い入浴時の体温上昇が低下すること、また、高齢者は温度感受性の低下により日常生活における入浴温度が若年層と比較し有意に高いことが分かりましたので、2016年9月2日~3日に開催された日本ハイパーサーミア学会第33回大会で報告しました。

【背景】
我々は、健康的な入浴法を検討し、湯温、入浴時間、入浴回数や入浴剤使用時の体温上昇からHSP入浴法を確立しました。一方、加齢に伴い温度感受性が低下することから、高齢者に適したHSP入浴法の検討が必要と考え、20~69歳までの男女を対象に、入浴時の体温上昇を比較し、身体に及ぼす影響を年代別に検討しました。

【方法】

  1. 被験者:20~69歳までの男女58名(男性30名、女性28名、 49.8±14.7歳)
  2. 入浴方法:40℃ 15分間の全身浴後 30分間の安静
  3. 測定項目:舌下温度、血圧、心拍数、酸素飽和度、唾液アミラーゼ活性、主観評価、入浴に関するアンケート 等
    修文大学倫理委員会の承認を得て、本人の同意の下に実施しました。

【結果】

  1. 入浴時の体温変化は、年齢との間に有意な負の相関を認めました(p<0.01)。
    年齢は、20~39歳、40~64歳、65歳以上の3群に分けて解析しました。入浴15分後の体温変化は、20~39歳で1.43±0.36℃、40~64歳で1.12±0.29℃、65歳以上で0.88±0.27°Cの上昇を認め、65歳以上は他の年代に比し有意に入浴時体温上昇は低値でありました。(図1)
  2. 年代別の身体への負荷指標として測定した血圧、心拍数、酸素飽和度は、65歳以上は他の年代に比較し、入浴中の収縮期血圧及び酸素飽和度の有意な低下を認めました(p<0.01)。 (図2、3)
  3. 日常の入浴時の体温を調査した結果、20~39歳で39.6±1.0℃、40~64歳で40.4±1.1℃、65歳以上で40.9±1.0℃であり、65歳以上で有意に高いことが認められました。
  4. 入浴時の体温変化は、体脂肪率との間に有意な負の相関(p<0.01)、性別と有意な相違(p<0.01)を認め男性は女性に比して体温上昇が高いことを認めました。
  5. 日常の入浴後主観評価では、各年代とも温熱感に差はありませんでしたが、65歳以上で元気さ・リラックス・リフレッシュにおいて有意に高値を示し、疲労・息苦しさ・発汗量では低値を示しました。

【まとめ】
65歳以上の高齢者では、入浴時の体温上昇が他の年代と比べ明らかに低値でした。また、入浴後の主観評価は良好でしたが、入浴中の収縮期血圧及び酸素飽和度の低下が有位で、身体への負荷が高いことが認められました。先行して行ったアンケート調査の結果から、高齢者は日常入浴時の湯温も高く、身体への負荷はさらに大と考えられます。
HSP入浴法は体温の上昇が必要不可欠であるため、高齢者が実施する際は、身体への負荷を抑えながら体温を上げる入浴法の提案が必要と思われました。

※HSP(ヒートショックプロテイン)とは熱ショック蛋白とも言われ、細胞が熱等のストレス条件下にさらされた際に発現が上昇し細胞を保護するタンパク質の一群。

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