研究領域

蒲公英エキスによる毛包強化因子*の産生促進作用

　私たちは、閉経を迎えられた女性に多く認められる脱毛や薄毛に着目し、漢方や中医学で、女性機能の正常化のために用いられている生薬について研究を重ねてきました。閉経後、微量に産生されているテストステロンの影響が大きくなり、薄毛になると考えられています。テストステロンを活性化する酵素に対する阻害作用について、数種類の生薬の作用を検討した結果、蒲公英（モウコタンポポ）根に活性があることを見出しました。そこで、さらなる蒲公英根の育毛に関する有用な知見を得るために、育毛試験や発毛試験を行い、育毛・発毛に寄与していると考えられている肝細胞増殖因子（HGF）への影響や、網羅的遺伝子解析等による新規メカニズムの解明についても研究を行いました。
*毛包強化因子：毛の成長の強化を目的とした因子

蒲公英根エキスによる肝細胞増殖因子(HGF)産生促進作用

　肝細胞増殖因子（HGF）は、休止期の毛包を成長期に導く因子の一つで、産生を高めることで育毛や発毛に有用であると考えられています。細胞に蒲公英根エキスを添加すると、このHGFの産生促進作用が顕著に認められ、HGFの産生促進が蒲公英根の育毛・発毛作用のメカニズムの一つであると考えられました。

蒲公英根エキスの毛包強化因子（Keratin Bundling Protein）発現促進作用について

　採取した皮膚を粉砕後、total RNAを採取し、遺伝子発現解析を行いました。無塗布のコントロール群に比べ、蒲公英根エキス塗布することによって２倍以上発現が高まった遺伝子についてリストアップしました。その中から、毛髪の硬さに関わると考えられるRepetin、Involucrin、Trichohyalinの毛包強化因子について着目し、蒲公英根エキスの濃度依存性を検討しました。
　解析の結果、蒲公英根エキスは毛包強化因子である3つのタンパク質（Repetin、Involucrin、Trichohyalin）を同時に上げることが確認され、毛髪のハリ・コシを上げる効果があることが示唆されました。

まとめ

　蒲公英（モウコタンポポ）根エキスの育毛・発毛効果に関するメカニズムの一つは、ＨＧＦ産生促進作用であると推測されました。また、蒲公英（モウコタンポポ）根エキスは、毛包強化因子である repetin、 trichohyalin、 involucrinの遺伝子発現を促進することが確認されました。蒲公英根エキスのこれらの作用によって、育毛・発毛を促進し、毛包の強化や毛髪のハリ・コシを高めることが期待されます。

　蒲公英（モウコタンポポ）根エキスの育毛・発毛作用に関する情報
⇒2008年ニュースリリース
毛包強化因子の産生促進メカニズムを解明～ タンポポ（ホコウエイ根）の作用発見！ ～
⇒2008年ニュースリリース
生薬（ホコウエイ根）及びその含有成分に「HGF産生促進作用」と「毛包・毛髪強化因子の発現促進作用」を確認
⇒2008年ニュースリリース
～新発見！タンポポの根に「HGF産生促進作用」～ ホコウエイ根(タンポポの根)及びその含有成分に「発毛促進剤」としての有用性を確認
⇒2009年ニュースリリース
モウコタンポポ（蒲公英）根エキス配合育毛剤の有効性を実証—ヒトでの育毛効果を確認−
⇒2018年ニュースリリース
生薬育毛剤のマイクロエマルション化による育毛成分の浸透性向上と効果の増強