1. 温泉とは

温泉の定義は、地中から湧出する温水、鉱水および水蒸気その他のガス(炭酸水素を主成分とする天然ガスを除く)で、
①温泉源の湯温が25℃以上
②指定された19種類の成分が1成分でも規定量以上
いずれかの条件を満たすことと「温泉法」に定められています。

2. 最新の「療養泉」をおぼえよう

温泉(水蒸気その他ガスを除く)のうち、特に治療の目的に供しうるものを療養泉といいます。
2014年7月、環境省から「温泉法第18条第1項の規定に基づく禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等の基準」がリリースされ、療養泉は、
①温泉源の湯温が25℃以上
②指定された7種類の成分が1成分でも規定量以上
いずれかの条件を満たすものと制定されています。
療養泉はその成分ごとに分類されており、含よう素泉が増えて10種類になっています。

1.単純温泉
日本で一番多いお温泉。刺激が少なく、効能もさまざまなので広く利用されています。

適応自律神経不安定症、不眠症、うつ状態、冷え性、末梢循環障害、軽症高血圧など

2.塩化物泉(食塩泉)
高齢者、回復期の病人に最適。日本では単純温泉についで多い泉質。海水の成分に似た塩分を含んでいます。入浴後、肌についた塩分が汗の蒸発を防ぐため保温効果は抜群です。

適応きりきず、冷え性、末梢循環障害、うつ状態、皮膚乾燥症など

飲用萎縮性胃炎、便秘

3.炭酸水素塩泉(重炭酸土類泉・重曹泉)
「冷の湯」と呼ばれ、入浴後の清涼感が特徴です。アルカリ性で角質を軟化し、肌が滑らかになります。

適応きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症など

飲用胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、糖尿病、痛風

4.硫酸塩泉
創傷治癒促進効果があります。血液に多くの酸素を送り込む作用があり、保温効果が大きいです。

適応きりきず、冷え性、末梢循環障害、うつ状態、皮膚乾燥症など

飲用胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘

5.二酸化炭素泉(単純炭酸泉)
低温のわりに保温効果が高いです。血管を拡張させるので血圧が下がります。日本では少ない温泉です。

適応きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症など

飲用胃腸機能低下

6.含鉄泉(鉄泉)
源泉に近く酸化していない含鉄泉が良いです。鉄を含む刺激の強い泉質のため、乾燥肌・高齢者は浴後、真水で流した方が良いです。

適応疲労回復、健康増進など(一般的適応症に準じます)

飲用鉄欠乏性貧血

7.酸性泉
肌の弱い人は湯ただれの予防に、入浴後は真水で洗い流した方が良いです。肌にしみる強い刺激があります。慢性的な皮膚病の治療などに利用されます。

適応アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、糖尿病、表皮化膿症など

8.含よう素泉
よう素を含み、飲むとコレステロールを下げる効果があります。
甲状腺機能亢進症の方は、飲用は禁忌となっています。

適応疲労回復、健康増進など(一般的適応症に準じます)

飲用高コレステロール血症

9.硫黄泉(硫黄泉・硫化水素泉)
刺激が強く、湯あたり、湯ただれに注意が必要。
硫化水素ガス特有のにおいが特徴です。血管を拡張させる作用や殺菌作用があります。

適応アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型は、末梢循環障害も)など

飲用糖尿病、高コレステロール血症

10.放射能泉
微量の放射能を含みラジウム泉、ラドン温泉とも呼ばれます。
ごく微弱な放射線量ですので心配はありません。

適応痛風、関節リウマチ、強直性脊椎炎など

3. 泉質別「適応症」をチェックしよう

「浴用」「飲用」の適応症も、最新の医学的知見に基づき改定されています。従来に比べ具体的かつ分かりやすくなっていますので、覚えておくとよいでしょう。

いかがでしたか? 泉質を知れば体調や健康状態に合わせて、温泉を選ぶこともできるようになりますね。次回温泉に行った時には、素通りせずにぜひ泉質表示をチェックして、その効果を堪能してみてください!

*典拠:一般財団法人 日本健康開発財団・温泉医科学研究所『健康づくりハンドブック 入浴指導』,2019, p.24-27