研究領域

　日本には、様々な泉質の温泉があります。その中でも「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「硫黄泉」「弱アルカリ・アルカリ性単純温泉」は美人の湯・美肌になる泉質といわれています。
そんな温泉地の中でも、「三大美人の湯」「三大美肌の湯」といわれる温泉が存在します。
「三大美人の湯」川中温泉（群馬県）、龍神温泉（和歌山県）、湯の川温泉（島根県）
「三大美肌の湯」喜連川温泉（栃木県）、嬉野温泉（佐賀県）、斐乃上温泉（島根県）

また、上記の温泉の多くは、pHが7.5以上の弱アルカリ性～アルカリ性です。

特に、炭酸水素塩泉や弱アルカリ・アルカリ性の温泉は緩やかに肌の皮脂を取り除き、肌をきれいにする働きがあります。入浴中つるつるの感触を感じられるため、人気の泉質の一つです。
溶かすとアルカリ性を示す入浴剤の成分としては、重曹（炭酸水素ナトリウム・NaHCO3）が良く知られています。重曹は、pHをあげすぎることがなく、肌に負担をかけにくい、入浴剤にも安心して使用できる成分です。当社の温泉タイプの入浴剤にも多く使用されています。炭酸ナトリウム（Na2CO3）は強いアルカリ性を示す成分で当社の入浴剤にも配合されております。しかし、単独で使用すると、高いアルカリ性により皮脂を取りすぎ、肌が乾燥する可能性もあります。

美人の湯 龍神温泉

A.成分について
　龍神温泉の泉質は重曹泉（炭酸水素ナトリウム泉）です。
ナトリウムイオン（Na⁺）と炭酸水素イオン（HCO₃^-）が豊富に含まれていることが特徴の温泉です。もちろん他にもK⁺, Ca²⁺, CO₃^2-, HSiO₃ ^-等10種類以上もの成分が溶け込んでいます。
成分からも温泉気分を感じていただけるよう、入浴剤を溶かしたときの温泉の成分を実際の温泉と比率を揃えて配合しております。
（温泉と入浴剤は濃度が異なります。温泉と全く同一というわけではありません）

Fig.1 龍神温泉の温泉分析書と当社入浴剤の成分比率比

B.色と香りについて
浴剤の色と香りも、実際に龍神温泉に行った際の感想をもとに作っています。山々と花、自然多き温泉地というイメージが強かったため、清らかな花の香りにしました。湯色は、花のイメージに加え、「美人の湯」の評判より、美人のみずみずしい肌をイメージした乳桃色にしました。

C.お湯の感触について
龍神温泉は、とろっとした入浴感が特徴の温泉です。当社研究員が実際に現地に赴いた際にその感触にとても感動しました。入浴剤でこの感動を表したい、と考え、高分子といくつかの化粧品成分を組み合わせ、実際の温泉で感じたとろっとした感触を表現しています。

有用性研究

　龍神温泉の泉質は重曹泉（弱アルカリ性～アルカリ性）あり、余分な皮脂を取り除く清浄作用かつ保湿作用等もあることから美人の湯と呼ばれています。
そこでこの特長に注目し、龍神温泉の肌に対する効果の研究を行いました。
Ref) 龍神温泉の入浴効果に関する研究－QOLと皮膚への作用について－
日本温泉気候物理医学会．2013

A.温泉入浴後の皮膚状態
龍神温泉と、同じpHの湯で比較し、皮膚の水分量と蒸散量による客観評価を行いました。(n=6)
結果として、龍神温泉は「余分な皮脂を落とす洗浄力はあるのに保湿力がある」まさに美人の湯であることがわかりました。

Fig.2 角層水分の変化量（浴後１０分後の数値）

Fig.3 水分蒸散の変化量（浴後１０分後の数値）
皮膚のバリア機能を保持しているほど、水分蒸散量が少なく、龍神温泉浴の方がバリア機能を保持していることがわかる。

龍神温泉入浴と家庭入浴を2週間行った時の前後評価の比較

【研究内容】

龍神温泉の周囲に住む方々を対象に、龍神温泉による肌への影響・気持ちへの影響を調査しました。比較として、家庭で入浴した際の評価をしています。
調査項目は２つです。
①肌質の評価
②気持ちの評価
結果として、龍神温泉に入浴した際、入浴前よりも有意に肌への良好な変化が現れたことがわかりました。ご家庭でさら湯に入浴した際は、龍神温泉に入浴した際の効果は見られませんでした。
①肌質の評価

Fig. 4　龍神温泉入浴と家庭入浴2週間前後のVASによる肌質の評価

※VAS評価（VAS：Visual Analogue Scales）　視覚的評価スケール
様々な質問に対し、被験者にその時の気持ち・状態を点数をつけて回答をいただく方法
今回の試験では、被験者に①入浴前②入浴後に肌に関する質問に答えていただき、その変化を結果としています。

５つの項目すべてにおいて、龍神温泉に入浴する前と後で、有意な差が見られました。
家庭で入浴していただいた際には、入浴によってこれら５つの項目の有意な改善は見られませんでした。
つまり、龍神温泉の泉質によって状態の良い美しい肌が得られた　と考えられます。

②気持ちの評価

Fig. 5 龍神温泉入浴と家庭入浴2週間前後のPOMS評価比較

※POMS　 Profile of Mood States(気分プロフィール検査)
医療・カウンセリング・職場や学校のメンタルヘルス等幅広い分野で使用される、主観的側面から気分を評価する質問紙法。被験者が置かれた条件によって変化する一時的な気分・感情を測定できる特徴を持つ。6つの気分尺度を同時に測定できる利点がある。
１.T-A:Tension-Anxiety（緊張‐不安）
２.D:Depression-Dejection（抑うつ‐落ち込み）
３.A-H:Anger-Hostility（怒り‐敵意）
４.V:Vigor（活力）
５.F:Fatigue（疲労）
６.C:confusion　(混乱)

龍神温泉へ入浴した前と後の気持ちの変化をみると
疲れや緊張が軽減し、活気が大幅に向上していることがわかります。①肌質の評価　と同等に、ご家庭で入浴していただいた際には、入浴によってこれらの項目の有意な改善は見られませんでした。
龍神温泉はその泉質により、入浴した際につるっとした気持ちのいい感触を感じます。その感触により気分の上昇がみられるのではと考えます。また、２週間続けて入浴を行い、肌質の変化を感じることによって、気持ちも上向きになったとも考えられます。また、龍神温泉に向かうことによる転地効果等、総合的な効果も考えられます。

アンチエイジング素材としての水素に注目

　水素は、酸化ストレスに対する活性酸素を消去し細胞防御機能を持つことが知られています。
温泉水に水素が溶存する源泉もあり、水素による抗酸化作用で美肌に効果的な水素浴が注目されています。私たちは、水素の抗酸化作用に注目し、表皮細胞試験で光老化に対する作用を検証し、UVB 照射による表皮細胞内・活性酸素種（ROS）産生が低濃度水素（25,50ppb）でも抑制されることを明らかにしてきました。これにより低濃度水素は、単回の紫外線照射による細胞障害を抑制し、皮膚を構成する細胞を保護することが示唆され、水素を効率よく皮膚に供給する手段として入浴剤が有用であると考えました。
低濃度溶存水素のUVB誘発酸化ストレスに対する作用の解析：ニュースリリース2018年

そこで、ヒトを対象に水素化マグネシウムを用いた水素入浴において、加齢に伴う皮膚機能の低下を抑制し、肌質の改善に繋がるかを検証しました。入浴条件は40℃15分入浴を2週間継続し1週間のウォッシュアウト期間を設けた1盲検法のクロスオーバー試験を行いました。その結果、水素入浴により、角層水分量・皮膚の明度・皮膚弾力性の有意な増加、くすみの原因となる重層剥離率の有意な低下を認めました。

水素化マグネシウム入浴剤によるスキンケア作用：ニュースリリース2018年

　水素浴による美肌効果への期待は高まっておりますが、今後も効果が期待できる素材として研究が進行していきます。