
名湯案内 岐阜県 奥飛騨温泉郷
3000m級の山々に囲まれて
日本の屋根といわれる北アルプス、飛騨山脈の槍ヶ岳、穂高岳、焼岳などを目の前に望むのが奥飛騨温泉郷です。文字どおり岐阜県北部の飛騨高地の「奥」に位置し、良質の温泉が湧き出しています。
奥飛騨温泉郷には、南から平湯温泉、福地温泉、新平湯温泉、栃尾温泉、新穂高温泉の5つの温泉があります。南北に連なる飛騨山脈の西側の中腹からふもとにかけて、これらの温泉が並んでいます。そして、どの温泉にもそれぞれ風情のある温泉宿や公共浴場があります。
▲奥飛騨の大自然の中に5つのすばらしい温泉がある。
▲ロープウェイの新穂高温泉駅。
今回訪れた新穂高温泉は、北へ北へと蒲田川の渓流沿いに県道を上っていくと現れてきます。まとまった温泉街という雰囲気ではなく、山の中に山荘や露天風呂が点在している印象です。
さらに奥へと上って行くと自動車道路は終点となり、その先は登山道となります。この自動車道の終点に新穂高ロープウェイの駅があります。
1970年に完成した新穂高ロープウェイは、新穂高温泉駅から出発し、第1ロープウェイと第2ロープウェイ合わせて総延長3200mほどもあり、標高2156mの西穂高口駅に至ります。
渓谷にある秘湯のような公共浴場
温泉地にはいろいろな公共浴場がありますが、新穂高温泉のそれは「公共」でありながら秘湯といった雰囲気です。
県道の中尾高原バス停から横道に入り橋を渡ると、真下に見えるのがその「新穂高の湯」。橋の脇から下へ細い急坂を降りると、河原が少し整地してあって、石 に囲まれた露天風呂があります。小さな脱衣所もあるので、着替えはしやすいのですが、管理人などはおらず、料金は「寸志(すんし)」として箱に入れるようになっています。
▲露天風呂「新穂高の湯」は管理人のいない共同浴場。
▲露天風呂からの眺望は、これぞ絶景!
▲橋の上から見た「新穂高の湯」。
高地の森林に囲まれた渓谷のはるか向こうには、北アルプスの山々が望めて実に気持ちの良いものです。眼下には蒲田川の渓流があり、この温泉の湯と同様、澄んだ美しい流れです。ここでは掛け流しの豊富な湯の中に、ゆったりとつかることができます。
湯の温度はそれほど高くないので入りやすいのですが、冬期には閉鎖されるようです。また、時期や時間によっては周囲を通る人もいなくなるので、グループで利用するのがおすすめです。
新穂高温泉には他に食事施設や休憩所が併設されている「ひがくの湯」などの公共浴場があります。
▲脱衣所が設置されている。利用料金は寸志として200円程度。
▲「ひがくの湯」
山荘にある広大な露天風呂
「新穂高の湯」から少し下がったところにある「水明館 佳留萱(かるかや)山荘」の露天風呂に入ってみました。
「佳留萱山荘」は、もともとは登山客の利用が中心の山荘ですが、現在はここにある広大な露天風呂を目指してくるお客さんも大勢いるようです。
巨大な鉄釜の風呂など貸し切りの露天風呂もいくつかあり、ここからも飛騨山脈の景色が望めます。
▲「水明館 佳留萱山荘」の玄関。
▲「水明館 佳留萱山荘」にあるものすごく広大な露天風呂。
混浴の大露天風呂は、広大な自然公園の中の大きな池のようです。
湯は無色透明でほんの少し硫黄の匂いがします。口に含んでみるとわずかに独特の味がありますが、肌への刺激はまったくなく、とても入りやすくさっぱりと気持ちの良い温泉です。
泉質は炭酸水素塩泉で、適応症としては、神経痛、筋肉痛、関節痛、慢性消化器病、疲労回復などが挙げられています。
▲「水明館 佳留萱山荘」内湯。
▲「水明館 佳留萱山荘」の望槍の釜湯。
広い空の下で楽しむ足湯
北アルプスのふもとというと山岳地帯のイメージがありますが、奥飛騨温泉郷への交通の便はよく、現在では気軽に訪れることができる温泉郷になっています。新穂高温泉以外の他の温泉と入り比べながらゆっくりと滞在したいものです。
▲焼岳のふもと中尾高原にある足湯「足洗いの湯」。
▲高原のまっただ中、広い空の下で楽しむ足湯は格別だ。
- 電車
- ●東京方面から
JR長野新幹線で長野駅まで 長野からJR篠ノ井線で松本駅
松本駅より、濃飛バス 約1時間30分 奥飛騨温泉郷 - ●名古屋方面から
JR高山本線「ワイドビューひだ」号で飛騨高山駅 飛騨高山駅より
濃飛バス 約1時間 奥飛騨温泉郷
- 車
- ●東京方面から
中央自動車道 松本ICから国道158号経由 約2時間 奥飛騨温泉郷 - ●名古屋方面から
名神(東名)高速 小牧ICから国道41号、国道158号経由 約4時間 奥飛騨温泉郷
ひとことコラム
ごくたまに、1000mにも満たない近郊の山を歩くことがあります。2000mをちょっと超える山には一度だけ登ったことがあります。海外の4600mの 山岳国境はバスで越えました。しかし、北アルプスのような3000m級の山に登ったことはまったくありません。体力も経験もないので、そうした山に登るこ とは想像もできませんが、高い山を眺めるのは大好きです。眺めているだけでも、不思議と気持ちが澄んでくるからです。そんな山々を眺めながら名湯に入った ら、どうしたって心身ともに癒されるに決まっています。