研究領域

　入浴は、親子のコミュニケーションを図る最適な場です。入浴を通したスキンシップや会話は、親子の絆を深め、子供の心の成長を促し、社会性を身につけるために重要な時間です。そこで、私たちは未就学児の親子を対象とした疫学研究において、入浴実態としつけや教育等の関係について解析しています。また、入浴剤が、親子のコミュニケーションを図る上で役立つための検討を行っています。

1. 入浴の好きな子供は社会性発達が良い！

　対 象 者：関東地方の7か所の保育所に通う311名の幼児の保護者
　　　　　 回答者223名（71.7%）
　調査方法：留め置き式調査による横断研究
　調査項目：入浴習慣等の基本情報、幼児の社会性発達スケール（STAR）*等
　　　　　　*「思いやる」「ことば」「運動」「考える」の4領域のスケール

　結　　果
1. 普段の入浴実態
年中シャワー浴：1.4%　さら湯浴：44.2%　入浴剤使用：54.4%
2. 「子供が入浴好き」とSTARの4領域との相関
・おもいやる（ルールを守る、おもいやり、協調性）　　　　　p<0.005
・かんがえる（知的好奇心、危険がわかる、自己コントロール）p<0.01
・ことば（コミュニケーション、読み書き技能）　　　　　　　p<0.05
・運動（手先の器用さ、運動機能、平衡感覚）　　　　　　N.S（有意差なし）

2.　入浴好きな子供はマナーが良い！

　対 象 者：関東地方の3か所の保育所に通う238名の幼児の保護者
　　　　　 回答者158名（66%）　幼児年齢4.9±1.0歳
　調査方法：留め置き式調査による横断研究
　調査項目：入浴習慣等の基本情報、入浴意識　等

　結　　果
1. 「幼児が浴槽入浴を好き（62.0％）」と相関する項目
・約束事を守る　・マナーを守る　・片付けができる
・入浴時に親子の会話がある　・入浴時にとても元気だ
・幼児の健康度が高い
2. 「親が浴槽入浴を好き（72.8%）」と相関する項目
・幼児が約束事を守る　・幼児がマナーを守る
・親の健康度が高い　　・親の幸福感が高い
・親の幼少期における入浴の思い出がある
3. 「浴槽入浴は子供のしつけや教育に有用と考えている（90.5%）」と相関する項目
・浴槽入浴は親子の触れ合い機会に有用である
・親の幼少期における入浴の良き思い出がある
　幼児および保護者の入浴意識と生活習慣、QOLとの関連：ニュースリリース2018年

　これらの結果より「入浴が好きな子供」は、約束事を守る・片付けができる等の生活習慣が良好で、社会性発達も良好である可能性を示唆しています。入浴での親子の触れ合い機会等のコミュニケーションが、子供の成長発達に有用である可能性が考えられます。

これらの結果より「お風呂が好きな子供」は、約束事を守る・片付けができる等の社会性発達に繋がるものと考えられます。これは、親子コミュニケーションが図られているものと考えられます。

3.　入浴剤を使用していると生活リズムが整う！

対 象 者：関東地方の5か所の保育所に通う266名の幼児の保護者
　　　　　 回答者192名（72.2%）
　調査方法：留め置き式調査による横断研究
　調査項目：入浴習慣等の基本情報、生活状況　等

　結　　果
1. 浴槽入浴時間
　さら湯：10.6±5.3分　入浴剤浴：13.0±7.4分　p<0.05
2. 入浴剤浴は、平日および休日ともに、さら湯浴と比較して、早寝早起きの生活リズムの傾向がみられました。

生活習慣 生活リズムと入浴剤

　入浴剤使用は、親子の触れ合いに有効にはたらき、浴槽入浴時間の延長に繋がっている可能性が考えられました。
　また、入浴剤使用は、就床起床、朝食夕食、入浴共に時刻が早い傾向にあり、早寝早起き等の生活リズムに関連する可能性が示唆されました。
　入浴が保護者と幼児の生活習慣、QOL、子育て、しつけ、教育に有用な可能性：ニュースリリース2020年

　以上の結果から、浴槽入浴は、生活習慣、QOL、子育て、しつけ、教育等に影響し、入浴剤使用による浴槽浴時間の延長は、親子のコミュニケーション機会に有用である可能性が考えられます。

まとめ

　お風呂は、親子のコミュニケーションを図る上で重要な場であります。入浴剤の使用は、浴槽入浴時間が長くなるなど、親子のふれあい機会にも有用であると考えられます。
　入浴が好きな子供は、社会性発達が良好で、礼儀やマナーなどを守ることができます。また、子供の頃に経験した入浴の良き思い出は、大人になってからの入浴時の会話、コミュニケーション等に影響する可能性が考えられます。
　私たちは、お風呂時間を、親子のふれあい機会として絆を深めるとともに、しつけや教育の場となるように種々の提案をしていきます。

浴用剤使用が親子の睡眠の質を上げ、QOLの向上に有用な可能性：ニュースリリース2020年