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入浴-健康増進

入浴-健康増進

 健康増進の取組を進めるにあたっては、健康づくり対策(健康日本21)、平成15年厚生労働省告示第195号をもって告示された健康増進法(平成14年法律第103号)第7条に基づく国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を参考とし、検討を行ってきました。国民の健康の増進の推進の基本的な方向としては、従来の疾病対策の中心であった二次・三次予防にとどまることなく、一次予防に重点を置いた対策を推進するとなっています。一次予防は、生活習慣に関連する危険因子として、栄養・食生活、運動不足、ストレス、睡眠不足、飲酒、喫煙などがあります(生活習慣病のしおり より)。

 入浴は、温浴効果により疲労回復や快適性を高めることからストレスを解消し、体温変化や心身の緊張をほぐすことから良好な睡眠にもつながります。今回は、日々の入浴が、健康増進につながることに関する取組について、温浴効果、快適性、QOL、自律神経に関する解説を行います。

入浴の作用

 入浴の主な作用は、温熱、静水圧、浮力で、体温上昇、血行促進、リラックスの効果から健康維持および増進に繋がります。体温の上昇により骨格筋の柔軟化や神経線維の活性化が抑制されて痛みが緩和されます。NOの産生や副交感神経活動の亢進は、血管拡張により血行が促進します。これらの作用から、肩こり、腰痛、冷え症などの症状を緩和することにつながります。また、重力から解放されたリラックス感は、心身の疲労回復を得ることができ、健常維持や増進に繋がると考えています。

入浴の主な作用 入浴の主な作用

 

1. 体温上昇

 入浴による温熱の刺激により、ヒートショックプロテイン(HSP)が産生され、疲労予防や疲労回復の作用に繋がることが、HSPプロジェクト研究所の伊藤要子(医学)博士により研究されてきました。HSPは、ストレス時の変性タンパクへの作用のみならず、普通の状態で変性や凝集が生じたタンパクを見つけ出し再生させます。

 入浴は、温熱刺激による体温上昇が容易にでき、日常生活においてHSPを産生することができる方法です。伊藤博士は、HSPを加温健康法としてお風呂に適用し、日常生活の健康に取り入れた創始者でもあり、私たちは、伊藤博士とともにさら湯浴において40℃20分間の入浴や、超発泡炭酸浴において40℃15分間の入浴でHSPの産生を認めることを確認しています。HSP産生により、疲労回復を促進させることは健康を維持する上で重要であり、さらに、予めHSPを高めておくことで疲労を予防することができます。

 入浴の疲労回復への期待は、「疲れた後の身体を癒す」ことでしたが、これからは、「疲れにくい身体を予めつくる」という意識が高まることを期待しています。

入浴による熱ストレスで 誘導されるHeat Shock Protein ( HSP 70 ) の増加を確認 :ニュースリリース2008年
HSPプロジェクト研究所との共同研究で新入浴習慣を提案 継続したHSP入浴法で健康維持:ニュースリリース2020年

2. 血行促進

 入浴による体温上昇は、自律神経活動および血管内皮細胞での一酸化窒素(NO)により血管が拡張されます。また、静水圧による体表面への圧力が、血行動態に影響を及ぼします。血行が促進すれば、各組織への酸素供給も促され代謝促進が期待されます。

 運動疲労後の入浴は、血行を促進させることで疲労回復を高めることができます。健常者7名を対象に、高強度運動負荷を30分の間隔をあけて2回行いました。30分間の間に、入浴なし、さら湯浴、炭酸ガス系入浴剤浴を行い1回目の測定値を100%とした際の2回目の運動パフォーマンスを比較しました。その結果、さら湯浴および炭酸ガス系入浴剤を使用した群は1回目に行った運動能力に近いあるいは同等以上のパフォーマンスを発揮し、初回の運動による疲れを回復させたと言えます。なかでも炭酸ガス系の入浴剤浴の回復力は入浴なしと比較し有意に高く、炭酸ガスによる血行促進の亢進またはメントールによる爽快感によるものと考えられます。

パフォーマンスの変化率

高強度運動の合間の「メントール配合炭酸ガス入浴剤」入浴がパフォーマンスを向上させる:ニュースリリース2021年

 体温上昇や静水圧による血行促進は、脚のむくみ解消にも繋がります。立位では下肢に血液がうっ血し、静脈還流が減少し脚の浮腫の原因にもなりますが、静水圧や体温上昇により緩和することができます。

足のむくみに対する硫酸マグネシウム含有炭酸ガス入浴の有効性を客観的に実証:ニュースリリース2008年

3. リラックス

 比較的ぬるめの湯への入浴や浮力により、交感神経の亢進を抑制します。また、程よい体温上昇や、香りを付与することでリラックスすることができます。
 入浴による自律神経への影響について、37℃、39℃、41℃のそれぞれ10分入浴での入浴による影響について検討を行っています。
 入浴直後には、副交感神経系%